Vol.32〜第一部手塚治虫とマンガ〜第二章手塚治虫成功の秘密
手塚治虫を育てた文化環境④〈映画〉〜その3
多彩な作風、数多い名作
今まで見てきたように映画は日常生活に密着した文化であったが、現在の映画とテレビを併せたメディアであったこともあり、「戦前は洋画と邦画を観る人がはっきり分かれていて、インテリを中心とする洋画族、奉公人、ビンボー人の邦画族は別々だった」(『和菓子屋の息子』/小林信彦)と多彩な作風のものが多く名作もその中に沢山存在した。
1967年に設立されアメリカで最も権威のある映画団体である、「アメリカ映画協会」(American Film Institude、通称AFI)が2007年に選出した歴代アメリカ映画ベスト100(AFI's 100 Years... 100 Movies)のベストテンには戦前作品が4作も選出されている。戦前には公開されなかった作品ばかりだが、当時の映画のクオリティが高かったことの証左であろう。また、ベストテン以下でも戦前の作品が数多くのランクインしており、その当時でも名作に接する機会が多かったことが伺える。
手塚治虫は『狸御殿』やエノケンの『西遊記』『猿飛佐助』『虎の尾を踏む男達』『法界坊』と日本の娯楽映画に親しむのと同時に、その家庭環境から洋画もよく見ていた。
〈アメリカ映画協会が選んだ歴代映画ベストテン戦前製作作品〉*が戦前製作
1 Citizen Kane* 1941 市民ケーン(日本公開1966)
2 Casablanca* 1942 カサブランカ (日本公開1946)
3 The Godfather 1972 ゴッドファーザー -
4 Gone With the Wind *1939 風と共に去りぬ (日本公開1952)
5 Lawrence of Arabia 1962 アラビアのロレンス -
6 The Wizard of Oz* 1939 オズの魔法使 (日本公開1954)
7 The Graduate 1967 卒業 -
8 On the Waterfront 1954 波止場にて -
9 Schindler's List 1993 シンドラーのリスト -
10 Singin' in the Rain 1946 雨に唄えば -
(AFIのHP「AFI's 100 Years... 100 Movies」より)
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