Vol.34〜第一部手塚治虫とマンガ〜第二章手塚治虫成功の秘密
手塚治虫を育てた文化環境④〈映画〉〜その5
手塚治虫の映画ベストテン
それでは、手塚治虫が実際少年時代に観た映画はどういったものであろうか。手塚は1985年にキネマ旬報の要望に応じて「日本映画史上ベストテン」と「外国映画史上ベストテン」を挙げている。
このベストテンで戦前の作品の中に日本映画には含まれていないが、洋画は『ナポレオン』(1927年)、『駅馬車』(1934年)、『天井桟敷の人々』(1945年なので戦中であるが)、『街の灯』(1931)、『戦艦ポチョムキン』(1925年)、『舞踏会の手帖』(1932年)、『白雪姫』(昭和12年)と7作もある(但し、戦前に公開されたのは『街の灯』『舞踏会の手帖』『駅馬車』の3作品であった。『ナポレオン』については公開年不明だが、手塚は1982年にオーケストラ付きで再上映されたのを見ている)。
また、「私の好きなフランス映画」(1988年キネマ旬報10月下旬号)で選んだ5作品も、5位の『赤い風船』(1956年)以外は、1位『天井桟敷の人々』、2位『鉄路の闘い』(1945年)、3位『望郷』(1937年)、4位『女だけの都』(1940年)といった戦前の作品でありその評価の高さが伺えるが、これらのベストテンの趣向を見ても手塚が如何に「インテリを中心とする洋画族」であったかがわかる。
〈手塚治虫外国映画史上ベスト10〉
1位 『ナポレオン』 公開年不明
2位 『2001年宇宙の旅 』昭和43年
3位 『駅馬車』昭和15年
4位 『天井桟敷の人々』昭和27年
5位 『第三の男 』昭和27年
6位 『街の灯 昭和9年
7位 『自転車泥棒』 昭和25年
8位 『戦艦ポチョムキン』 昭和42年
9位 『舞踏会の手帖』昭和13年
10 『位白雪姫 昭和』25年
(キネマ旬報1985年1月上旬号より)
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