Vol.35〜第一部手塚治虫とマンガ〜第二章手塚治虫成功の秘密
手塚治虫を育てた文化環境④〈映画〉〜その6
子どもにはたまらないラインアップ
しかし、手塚治虫少年が見ていたのは名作ばかりではないことが推測される。何故ならば、「結局、子どもが興味を持つのは、〈アクションと特撮とアニメ〉である」(『一少年の観た〈聖戦〉』小林信彦/筑摩書房)というように、やはり胸ときめくのは決して名作ではなくそういった類の作品であったのではないか。
運動が苦手であった手塚はアクション映画には興味は向かわなかったようだが、特撮を駆使したSFや冒険映画、そしてアニメには大いに惹かれるものがあった。現在ほどではないにせよ、すでにこの種の映画の雛形は全てあり当然手塚治虫も下にある映画の何本かは夢中で観ていたはずである。
アニメオタクの原点にはSFがあるがその意味で手塚は筋金入りで、ある意味元祖とも言えるではないかと思う。
〈戦前戦中に日本で公開された主なSF・特撮映画〉
『ロスト・ワールド』 大正14年:コナン・ドイル原作の恐竜SF
『『メトロポリス』 大正15年:ロボットが登場する近未来SF
『怪獣征服 』 昭和2年:SFアドベンチャー
『月世界の女』 昭和3年:フリッツ・ラング監督のSF宇宙劇
『一九四〇年』 昭和4年:近未来SF
『五十年後の世界』 昭和5年:近未来SF
『フランケンシュタイン』 昭和6年:怪奇ホラーSF
『吸血鬼』 昭和6年:伝奇ホラー
『奇蹟人間』 昭和6年:H・G・ウエルズ原作近未来SF
『ジキル博士とハイド氏』 昭和7年:怪奇サイコホラー
『魔人ドラキュラ』 昭和7年:伝奇ホラー
『獣人島』 昭和7年:H・G・ウエルズ『ドクターモローの島』
『F・P一号応答なし』 昭和7年:近未来SF
『キング・コング』 昭和8年:SFアドベンチャー
『コングの復讐』 昭和8年:SFアドベンチャー
『透明人間』 昭和8年:H・Gウエルズ原作元祖透明人間
『トンネル』 昭和8年:SFアドベンチャー
『殺人鬼と光線』 昭和9年:怪奇ホラーSF
『空の殺人光線』 昭和9年:SFアドベンチャー
『五百年後の世界』 昭和10年:アドベンチャー未来SF
『幽霊西へ行く』 昭和10年:巨匠ルネ・クレールのファンタジー作品
『透明光線』 昭和10年:SFアドベンチャー
『来るべき世界』 昭和11年:H・G・ウェルズ原作の近未来SF
『海底下の科学戦』 昭和11年:SFアドベンチャー
『巨人ゴーレム』 昭和11年:伝説が元になっている西洋盤大魔神
『超人対火星人』 昭和11年:フラッシュ・ゴードンシリーズ中の一作
『失はれた地平線』 昭和12年:アドベンチャーファンタジー
『東京要塞 』 昭和13年:日活製作、海野十三原作
『火星地球を攻撃する』 昭和13年:フラッシュ・ゴードンシリーズ中の一作
『フランケンシュタインの復活』 昭和14年:怪奇ホラーSF
『エノケンの孫悟空』 昭和15年:ファンタジーコメディ
『エノケンの孫悟空』 昭和15年:円谷英二の名を知らしめた特撮作品
『ハワイ・マレー沖海戦』 昭和17年:特撮担当円谷英二
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