Vol.33〜第一部手塚治虫とマンガ〜第二章手塚治虫成功の秘密
手塚治虫を育てた文化環境④〈映画〉〜その4
戦前はヨーロッパ映画が強かった
戦前は現在と違いハリウッド一辺倒ではなく、今では信じられないことであるがヨーロッパ映画が海外映画ベストテンの半数を占めていた時期がある。といってもこのベストテンはキネマ旬報のもので、必ずしも大衆が観たことを示す興行収入とは違った評価であるが、先進的な雰囲気も含めてその時代の世相を反映しているといえるであろう。
戦前のキネマ旬報のベストテンを観ると、ほぼトーキーに移行した昭和6年から洋画ベストテンが戦争で中断される昭和15年まで、10年間でフランス映画が何と9年連続で一位を獲得している。下にある昭和11年、14年のベストテンでは何と7作品がヨーロッパ映画である。
戦争前の年は世相を反映してかドイツオリンピックの記録映画が一位を獲得したのでアメリカ映画は首位になれなかった。インテリ雑誌の性格からかヨーロッパ、特にフランス映画が好みで、大衆が好んだハリウッドの娯楽映画はベストテンには入って来ない。
1936年(昭和11年)キネマ旬報洋画ベストテン
1位 『ミモザ館』(フランス)
2位 『幽霊西へ行く』(イギリス)
3位 『オペラ・ハット』(アメリカ)
4位 『白き処女地』(フランス)
5位 『地の果てを行く』(フランス)
6位 『罪と罰』 (ランス)
7位 『科学者の道』(アメリカ)
8位 『上から下まで 』(フランス)
9位 『人生は四十二から』(アメリカ)
10位 『ドン・ファン』(イギリス)
1939年(昭和14年)キネマ旬報洋画ベストテン
1位 『望郷』(フランス)
2位 『格子なき牢獄』(フランス)
3位 『ブルグ劇場』(オーストリア)
4位 『わが家の楽園』(アメリカ)
5位 『デッドエンド』(アメリカ)
6位 『素晴らしき休日』(アメリカ)
7位 『早春』(ドイツ)
8位 『美しき青春』(フランス)
9位 『とらんぷ譚』 (フランス)
10位 『人生の馬鹿』 (オーストリア)
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