Vol.57〜第一部手塚治虫とマンガ〜第二章手塚治虫成功の秘密
手塚治虫を育てた環境④家庭環境〜父親手塚粲(ゆたか)その2
法曹の道には進まず
ここで重要なのが粲の進路に対する父太郎の態度である。粲が中央大学の法学部に行きながらも父と同じ法曹界、あるいは仕官の道を目指さなかったのは、父太郎が「自由・平等・解放の思想」を旨とするボアソナードの影響を大いに受けていたからではないだろうか。粲に対してもそれほど勉学を強いずに私学に進ませ、サラリーマンになるのを認めたのも本人の意志(あるいは資質)を尊重していたからではないかと思われる。
そんな環境でノビノビと育った粲は大学時代からカメラや漫画を趣味とし、ボート部の主将も務めるモダンボーイであった。だが、この「ボンボン」の多彩な趣味が後年手塚治少年の文化環境に大きな影響を与えることになるのである。
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