Vol.73〜第一部手塚治虫とマンガ〜第二章手塚治虫成功の秘密④ マンガ雑誌という特異メディアの存在〜その3 マンガ雑誌が果たした役割
さらに、この二誌に続き1963年少年画報社『少年キング』、1968年集英社『少年ジャンプ』、1969年には秋田書店の『少年チャンピオン』が創刊され、加速度的に雑誌販売部数を伸ばしてゆく。その中でも『少年ジャンプ』は1990年代に発行部数600万部を突破し、世界に比類なき雑誌となった。また、日本では少年雑誌だけではなく、少女雑誌も興隆を極め、少女マンガというこれまた独特な文化を培った。
ここでマンガ雑誌が果たした役割を整理してみると以下のようになる。
1) 安価でクオリティの高い娯楽の大量供給を可能にしその結果マンガを一大産業に押し上げた
2) 多くの才能ある人材を排出した
3) アニメをはじめとする日本のエンタティンメントメディアに対する一大ソフト供給源となった
以上、マンガ雑誌について述べてきたが、ここに来てひとつ懸念されるのは市場が収縮しつつあるということである。1996年を頂点として昨年まで12年連続で数字を減らしている。これはマンガ産業のみならず、日本のエンタティンメント産業にとってゆゆしき問題である。 この背後には少子化問題や多メディア化によるマンガ離れがあるのは間違いないであろうが、おそらく音楽同様かなりの勢いでマンガの流通が配信メディア、特に携帯電話による配信にシフトしているという事情も考えられる。マンガ雑誌を抱える大手出版社もノン・パッケージならぬ「ノン・マガジン」時代を意識せざるを得ない時代がきているのかも知れない。
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