『ラーメン屋vs.マクドナルド』(竹中正治/新潮選書680円税別)1
日米における根本的な製作アプローチの違い
久しく本の紹介をしていなかったため読み溜めた書物が増えてきた。それらの本を反芻したいということもあり、アニメビジネスに関わると思われる本について触れてみたい。
「エコノミストが読み解く日米の深層」というサブタイトルがついているので、経済的な話が多いのかと思ったらアニメネタ満載の新書であった。したがって、面白くないはずがなく、取り分け日本のアニメ産業に対する含蓄に富んだ視点が新鮮であった。
2004年にワシントンD.C.で行われたりんたろう氏の講演会「日本のアニメの過去と未来」に、「おたく」ではないが「軽度のアニメ・マンガファン」である著者が出席して感じたことは、日本のアニメ制作者が持つ「日本職人の心意気」であった。それをりんたろう氏は「日本人のDNA」と表現したそうだが、ここからにわかに論が展開する。
氏が指摘するところの「アニメに代表される日本のポップ・カルチャーに見られるひとつの特徴は、文化的要素の雑多性、多様性である」には大いにうなずけるがこのような指摘は少なからずある。氏のユニークな視点はさらに広がる。
即ち、「(日本の)ポップ・カルチャーの創出が、米国に比べると相対的に小規模な資本と職人的価値観を持つ人々によって担われている」という指摘で、これがアメリカとの比較において「ラーメン屋vs.マクドナルド」という対比となる所以であると言う。
ハリウッドタイプのビッグ・ビジネスは構造的に大きな収入を必要とする。従って、市場の公約数的な需要・好みを反映した作品とならざるを得ない。それは製作のパターン化や標準化を招くが、これこそマクドナルド的ビジネス・モデルに他ならない(「ジャンクフードのグローバル化」)。
ところが、日本のアニメやマンガには「(こだわりの)ラーメン屋的供給構造」が根強く残っており、製作者が自らのセンスにこだわって、多種多様ものを創出、供給している。ビジネスの規模こそ小さいが多様でユニークなものが生まれるというのが、著者がいうところの「ラーメン屋vs.マクドナルド」の違いなのである。
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