『コミックマーケット創世記』(霜月たかなか/朝日新書700円税別)
元祖おたくではなくおたくの元祖
中国からレポートしようと思って書き込んだのだがうまく行かなかった。中国に関してはいずれまとまった形でお知らせしたい。
去る3月14日のことであるが、津堅さんからのメールで知った日本アニメーション学会 理論・歴史研究部会主催の公開研究会を見てきた。江古田の日芸で行われたのであるが、ユニークな内容でとても面白かった。それもあってか数十名の参加者が集ってかつてない盛況ぶりであった。
第一部はアニメーションの上映と解説による「越境するアニメーション-ソユズムリトフィルムを中心に」。発表者は土居伸彰さん(東京大学大学院)で、旧ソ連圏のアニメーションから、現在のロシア・アニメーションの展望までを取り扱うという内容であった。
第二部は須川亜紀子さん(青山学院大学)の研究発表でタイトルは「魔法少女TVアニメーションの「フェミニスト・テレビ学」的読みの可能性」である。会場からの質問もあったが、どうもフェミニストの定義が違っているらしくいまいちピンと来る内容ではなかった。
こちらは「魔法少女TVアニメ」というジャンルから、日本における・テレビ学的アプローチに対する可能性を探るとしている。発表の中では 具体例として、『魔女っ子メグちゃん』と『魔法の天使クリィミーマミ』を取り上げられていた。
そして第三部が「「アニメブーム論」の試み」という討論会であったがこれが面白かった。司会は津堅さん、討論者は第一部の土居伸彰氏、小川敏明氏、そして本著の原田央男(霜月たかなか)氏であった。過激な小川氏の発言もありなかなかエキサイティングな内容であった。
中でも特に興味深かったのは年代別で作品の見方がまるで違っていることであった。エヴァについて一番若い土居伸彰氏などは完全に作品に同期してしまうような強烈な影響を受けたらしいが、原田氏は「なんてあざといつくり方なんだ」と思ったそうだ。実は私も原田氏とほぼ同じ見解で、「実に巧い。アニメファンに受けるような要素が全部入っている作品だ」と思ったのである。
オタクの起源はSFファンにあるというのが通説になりつつあるがこの本を読むとそれを実感できる。オタクのいない時代のオタクは押し並べてSF好きであった。そういう意味で原田さんの世代は元祖オタクではなくオタクの元祖なのであろう。
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