『おたくの起源』(吉本たいまつ/NTT出版1,600円税別)
おたくのルーツに迫る植草本
この本もアニメビジネスがわかる本127で書いた植草本の最新作である。ということで濃いテーマではあるが、よくまとまっており読みやすい(他の植草本が読みにくいという訳ではない。悪文で数字が多く、誤字が多かった私のが一番読みにくいと思います。済みませんでした)
本書ではおたくの起源はSFファンに遡ると明確に規定されている。確かにおたくというジャンルがなかった頃のそれらしき人というのはSFファンであったと思う。大衆的存在であったマンガに比べSFはインテリジェンスが高く今日のおたくに相通じる素地があった。
また、特撮ファンもその起源のひとつとされている。おたくとは到底言えない私であるが特撮ものは大好きで、その原点は日本の怪獣ものではなくかの『キングコング』であった。そのせいか東宝の怪獣映画がはじまる前にキングコングに接してしまったので着ぐるみ怪獣には多少白ける部分があった(といいながら熱心に見ていたが。若大将が併映だったし)。
特に四つんばいになって「膝」があるような人間体型の怪獣には抵抗があり、円谷ものの怪獣に対しては斜に構えて見ていた記憶がある。要するにコマ撮りが好きだったのである。映画館で見たレイ・ハリーハウゼンの『シンドバット七回目の挑戦』『アルゴ探検隊の大冒険』『恐竜100万年』などを子ども心に夢中になりこちらはそのまま卒業することなく今に至るのである。
中国で見たアニメであるがおそらく一番欠けているのがSF精神であろう。荒唐無稽な、手塚治虫が批判された当時の言葉で言えば「でたらめな」発想が必要なのではないだろうか。もともとそういう発想がないのか、あるいは政治的な規制(ガンダムやR2のような作品だと政治体制の描写が不可欠である。中国では勝手に将来の政治体制を設定すること自体がタブーなのかも知れない)があるのかわからないがこの種の自由な発想がない限り面白いストーリーは生まれ得ないと感じた。
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