『黒澤明という時代』小林信彦
(09年9月/文藝春秋/税別1,667円)
リアルタイムでの黒澤評
前回橋本忍の本を紹介したが、師事したのは伊丹万作であった。その息子が伊丹十三なのであるが、中学生時代に黒澤組のスクリプターである野上照代に面倒を見てもらっていたとは知らなかった。『天気待ち』(野上照代/文春文庫)でそれを知ったのだが、この本も黒澤本としては面白かった。
さて、小林信彦の黒澤本である。何せ『姿三四郎』をリアルタイムで見ている人である。それだけでも脱帽ものだが、実際読んでみると黒澤「三四郎」が如何に一斉を風靡した映画だったのかがわかる。
自分自身がリアルタムで見た黒澤映画は多分『赤ひげ』辺りからではなかったか。そして、自分の意思で見たのは『どですかでん』であったように思う。だが、正直あまり面白いとは言えず、その後も繰り返して見たのは『七人の侍』や『用心棒』といった作品であった。
というような次第で、黒澤明がどのような位置を占めていたのかは実感としてわからないのである。その点、本書はその時々の黒澤映画の姿を的確に捉えている(同時に社会的評価も)。もちろん、筆者の黒澤作品評も秀逸である(この人の映画評が一番好きです)。黒澤生誕100周年で盛り上がる(予定の)本年を興味深く過ごせる一冊となるであろう。
(Twitterならぬ、Boyaitter)
野上さん、森一生(座頭市に眠狂四郎!)さんとお噂があったんですね・・・
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