『複眼の映像—私と黒澤明』橋本忍
(06年2月/文藝春秋/税別2,000円)
黒澤明、そのクリエイティブの秘密
手塚治虫の生誕80周年が終わったと思ったら今度は黒澤明生誕100周年。黒澤明について書かれた本にはついつい手が出てしまうのだが、恥ずかしながらこの本の存在は知らなかった。実は本書の存在を知ったのは、かの「アニメの殿堂」会議の席上であった。 そう、あの「アニメの殿堂」である。文化庁で行われた審議会に動画協会理事長の補佐役として傍聴したのであるが、その席上、座長の浜野先生が「本書に黒澤明を所長とした国立映画撮影所の構想があった事が書かれている」と発言されていたので慌てて取り寄せたのであった。 「国立映画撮影所構想」については全然知らなかった。読むと20年ほど前に確かに黒澤明を所長とする「国立映画撮影所構想」があったらしく、それに橋本忍が深く関わっていたとのことである。もしそれが実現していたら日本の映画界はどうなっていたであろうか。 その種の興味はともかく、本書は黒澤ファンだけではなく、エンタテインメントのクリエイティブに興味がある人間にとっての必読書であると思う。黒澤映画の脚本の秘密、つまりコアクリエイティブがどのように形成されていたのかがわかるからだ。黒澤明が共同で脚本を執筆していたのは有名な話だが、その役割分担や経緯などが余すところなく描かれており非常に興味深い(特に小国英雄)。数ある黒澤本の中でも最高峰に位置するのではないかと思う。 (Twitterではなくただのぼやき) それにしても映画全盛期時代の脚本家のギャラは凄かったんだなー・・・
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