『アフロ・ディズニー』
菊池成孔/大谷能生
(09年9月/文藝春秋/税別1429円)
オタクと黒人ミュージシャンの共通性
このタイトルでは買わざるを得ない。ディズニーだけだと一飜(いーはん)であるが、真逆に思えるアフロがつくと二飜(りゃんはん)どころか満貫である。文春の本でもあるし即買ってみた。 で、結局アフロとディズニーの関係はどうなのかというと、実はよくわからない。これも題名の勝利なのであろうが、実際ディズニーに言及しているページはそれほど多くはない。 そういう意味では、ディズニーと聞けば「パブロフの犬」の様にアマゾンをクリックしてしまうような人間に取っては、「またダマされた」と思っても仕方がないのであるが本書に限っては許す。なぜなら示唆される事が多かったからである。 「ミッキーマウシング」についての論考もそうであるが、「オタクのメンタリティにもっとも近いものは、アメリカ黒人です」など、興味を引く見立てが多い。ディズニー・アニメーションからはじまる二〇世紀文化の「幼児性」を最大限に反映させた結果、「大人でも楽しめるような、成熟した幼稚さの氾濫」がオタク文化であるといった提議も刺激的である。 ついでに、大人である事に疲れた欧米人が、「大人がそのまま子供である日本のオタク文化というものに、恥じらいや自負心を捨て、大いなる驚きと憧憬を抱き始めている。そしてその動きが、ブラック・ミュージックとハイ・モードにまで及んできた」とある。 極めつけは、「これだけマンガ/アニメ業界が活発であるのに、例えば映画と異なり、「世界のアニメ(マンガ)全史」のような調査に基づいた、作品の価値を確定させるような批評が生まれないのは、一体どのような抑圧が働いている結果なのでしょうか?」という指摘。確かにその通りであるが、続きは本書を買って読んで下さい。 (蛇足ながら・・・) ということで、この作者の本を買い続ける事になってしまいました・・・
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