『ネットビジネスの終わり』山本一郎
(09年11月/PHP/952円税別)
妙に詳しいアニメ裏事情
ネットビジネスについて書かれた本である。本職とも大いに関わりがあるので興味深いが、この本やたらにアニメ事情に詳しい。数字が伴っているのでインサイダー情報なのであろうが、「アニメ、ゲームが成長産業になれない理由」という刺激的な第三章が果たしてその通りなのか検証して見たい。
本書が述べている日本産業の傾向(ビジネス戦略の欠如)はそのままアニメ産業に当てはまるのは確かである。また、既存のメディアがもうじき瀕死の状態を迎えるであろうこともうなずける。で、なぜその次に「アニメ、ゲームが成長産業になれない理由」が出てくるのであろうか。
第三章を見るとやたらに数字が出てくる。公知の産業データもさることながらガンダムSEED DESTINYの制作費が3,300万円ということまで書かれてある。多分というか、ほぼ事実であろうが凄い情報収集力である。
だが、P116にある有力コンテンツホルダーが持つ上位5%のタイトル群が、アニメ産業全体の85%の売上を占め、利益では実に329%を叩き出しているとあるのが、これは果たしてどこから取ったデータなのであろうか?出典がないのでインサイダー情報なのであろうが、そもそもアニメ業界がそういったデータを持っていないのに、どうやって筆者それを知り得たのであろうか?(よかったら教えて下さい)
ということで、筆者が「アニメ、ゲームが成長産業になれない理由」として結論づけたのは産業の仕組みに問題があるということである(コンテンツ業界全体に言えるということだが)。そこに非効率な業界慣行が温存されたままので、常用の再編を促すようなプロセスを行政が主導することであり、資本を集約させ充分な収益を産業に還元できる仕組みを形成することであるそうな。
いや、全くその通りであるが、ではいったいどうやった出来るものか。それも教えて欲しかった。ただ、アニメとゲームを一緒にするのは如何なものか。その実態にはかなり乖離がある。トップ企業の売上が200億と1兆8千億の業界では自ずから異なるのではないか。それに、任天堂は、筆者がアニメ、ゲーム業界が蛸壺指する原因となっていると指摘する様なコアなファン層狙いではない。ちと無理があるのでは。
(蛇足ながら・・・)
表紙の腰巻に「切込隊長」とあるが、確かにその通りです。切っ先鋭くバッサバッサとなぎ倒すのですが、言ってることは意外と正論で、それほどの新味はないのでは・・・・・・
山本一郎氏はブログ界隈では大変有名な方です。切込隊長で検索すればすぐにブログが出てきます。
仕事はゲーム業界のファイナンスを中心に幅広く手がけておられるようで、様々な情報を集めるのが仕事の方と言っても良いかと思います。
投稿情報: いぼのめ | 2010/04/21 01:23