『ハルヒ in USA』
(三原龍太郎/10年7月/NTT出版/税別3,600円)
日本のアニメが海外でどのように受容されているのか
本書はアメリカにおいて涼宮ハルヒがどの様に受け入れられたかについて書かれたものである。もともとコーネル大学大学院の文化人類学修士論文であったものを翻訳・加筆・修正したものとのこと。修士論文が書かれたのが09年1月ということで、状況がかなり変化している部分もあるが論旨自体は有効である。
著者は経産省勤務の「帰国子女」(というよりアメリカ在住が25年間に及んでいるそうなのでネイティブに近いのでは)。まだ32歳という若さである。前回紹介した『マウス・アンド・マジック』のレナード・マルティンが著述当時30歳であったことを思えば、日本にもようやく早熟の評論家が出現したと言えるであろう。
アニメを語る同世代の「評論家」はいる。だが、その語り口は印象論の域を出ておらず、つまりは証明を必要としないレベルのものが多い。要するに汗をかいていないのであるが、関係者の発言を安易に引用しただけでは本当の姿は見えてこず、結局そのほとんどが一般的な認識の追随に終わってしまう。
その点、本書は人口に膾炙している俗論を汗をかきつつ論破している。海外における日本のアニメの実態はどうなのか、世の言説とずいぶん異なっていることが本書を読めばかなり明らかになるはずである。
職業柄、おそらく相当忙しいであろうが、アニメ産業に直言する次著の出現を待ちたい。
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