『もっとわかるアニメビジネス』解説〜第一章アニメーションとビジネス1
今までなかったアニメビジネスの歴史
それでは、本文の解説に入りたい。第一章は「アニメーションとビジネス」である。要はアニメビジネスの歴史。本文中に、「どんなビジネスにおいても現在そこで起きている事象を理解するにはその歴史的経緯を知るのが実は一番早道だったりする。本書ではまずそこから入り日本のアニメ産業が置かれている現状について展開してみたい」とあり、急がば回れの例えではないが、アニメビジネスを知るためには、その大本を知るのが以外と近道ではないかと思ったのである。
さらに、今までアニメの歴史について書かれた本はあっても、ビジネスの歴史についてはなかった。それもあって是非一度著してみたいと思った次第であるが、ここで突然本の紹介。
『アニメとプロパガンダ』という本である。法政大学出版局から7月末に出されたばかりであるが、これが凄い。著者は1980年生まれのセバスチャン・ロファ。多分フランス人の教師である。1980年生まれだから今年31歳である。この若さにして、400ページ余りの大著を書き下ろしているのである。膨大な資料に裏打ちされた貴重な労作である。快挙と言ってもいいだろう。
フランスに居ながらにして世界中のプロパガンダフィルムに接することが出来る。かつ、資料も豊富。といった恵まれた環境は置くとして、目の付け所が素晴らしい。日本でも人気アニメの分析・研究だけではなく、是非このような試みがなされて欲しいものである。
最近アニメなどのポップカルチャーなどを研究対象とする若手が増えているが、書くテーマが集中する傾向がある。要するに自分の好きなアニメについて触れたいのだろうが、そのほとんどが研究ではなくエッセイ(感想文)と化しているケースが多い。ライターになるなら別であるが、本当にアニメを研究したいのなら、もっと冷静にテーマを考えるべきであろう。かの谷沢永一先生も、大正文学なら研究者が少ないのでどうかと小田切秀雄(授業受けたことがあり)から勧められて研究生活をスタートさせたという経緯がある。誰も手を付けない分野に日本の若手も大いに挑戦して欲しいものである。手つかずの分野は山ほどあるはずなので。
話が横に逸れてしまったが、アニメビジネス、あるいはアニメ経済の歴史というテーマも今まで手つかずであった。ということもあり是非書いてみようと思ったのである。
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