〜第一章アニメーションとビジネス16
60年体制が続く日本のアニメーション業界5
60年代の血を引かない会社
正直なところ、音楽は才能のあるミュージシャンが一人いれば企業が成立する。いとも簡単にインディーズレーベルが生まれるのである。この傾向は音楽が個人制作の時代に入り一層浮き彫りになっているが、アニメはそうは行かない。
極端な話、音楽は楽器が弾けなくても、作曲方法を知らなくてもコンピュータがあれば一人でサウンドをつくれ、それが商業的に通用したりもする。しかし、アニメの場合、ビジネスとして通用するレベルのものをつくるには、ノウハウの蓄積やチームワークが必要となる。
もちろん、アニメも個人制作の時代に入ってきてはいるが、音楽と異なり絶対的な生産性の違いという課題が残されている。音楽なら個人制作でも1年間でアルバム1〜2枚分(50分〜100分程度)つくれるが(弾き語りならその3倍、4倍はつくれるだろう)、アニメはそうは行かない。フラッシュなら生産性は高いだろうが、ビジネス的に成立している例は少なく、まだハードルが高い。というような事情もあり、アニメ制作を行う企業は音楽のように、ある日突然登場するという訳には行かないのである。
日本のアニメ企業で60年体制の血を引かない企業があるかと考えたら、それはガイナックスくらいなものであろうか。またその血を引くゴンゾ。あるいは札幌から出て来たサテライトか(ソフト開発系)。綿密に調べたわけではないが、60年代体制の系列以外でアニメシーンに名前を馳せた会社は他に知らない。
DLE、コミックウェーブ・フイルム、シンク、ファンワークスといった会社もあるが、インディーズシーンを脱し切れていない(シンクは今年解散)。アニメシーンを刺激する新しい企業がどんどん登場して欲しいものであるが、制作のシステムを考えると彗星の如く突如出現するのは難しいようである(DLE以下の企業の特徴は、山手線の内側に所在していること。麹町に2社、神谷町、青山といった住所は60年代系企業には見当たらない。ただし、牛込、銀座等に営業拠点を置く大手はある)。
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