『なんでコンテンツに金を払うのさ? デジタル時代のぼくらの著作権入門』
(岡田斗司夫・福井謙策/小学館1,575円/2011年12月)
著作権VSデジタルの時代に
デジタル技術の浸透により避けて通れなくなった著作権問題。本書は既存書に比べおそらくそれについて一番フレキシブルな視点で語ったものであろう。
構成的には両社の対談で「評価経済社会」を提案する岡田斗司夫氏が突っ込み、著作権サイドの立場から弁護士の福井謙策氏が受ける形になっている。自炊からはじまり、コピーにおけるDRMなどの問題について繰り出す岡田斗司夫に対し、福井氏が著作権の歴史や考え方を踏まえて語る問答は面白くわかりやすい。
この二人のやり取りを読むに付け、デジタル時代にはやはり新しいビジネスモデルが必要なのだと痛感せざるを得ない。「あらゆる産業がシュリンクする」と述べる岡田氏には「下山の思想」が垣間見えるが、そんなことを言っている間に圧倒的な力を持つアメリカ発のプラットフォームがどんどん巨大化し、あらゆるコンテンツを飲み込もうとしているのが現状である。コンテンツをフリーにという岡田氏の提案が結果的に彼らだけに経済的利益を与えることにならなければよいのだが。
今の日本に必要なのはデジタル時代に対応できるビジネスモデルであろうが、岡田氏は既にお布施モデルの「オタキングex」を構築した。コンテンツをプロモーションと考え、こういった会員システム形で収益を上げるのはある種宗教に見る古典的なビジネスモデルである。岡田氏の母親が「神さま」であったことを考えればこそすんなりと考えられたのではないか。
尚、この文章を書いた後に「文藝春秋1月号」を読んだら、福井氏が寄稿しており、アメリカの著作権分野は年間10億兆円という外貨を獲得しているとのこと。一方、日本は年間5,600億円もの赤字を出す著作権輸入国なんだそうである。これを考えると著作権フリーになると日本は得するが、アメリカがとても許しそうもないと思うのだが。
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