(2013年3月/小山昌宏・須川亜紀子編/新潮選書2,300円)
最近大学や大学院で研究のテーマにアニメを選ぶ学生が増えている。実際、教えていた大学院や大学での状況を考えてもその通りであるし、他の大学の学生から卒論のためのインタビューを受けたりするようになったので、実際そういう傾向であるのは事実であろう。
今までアニメに関する研究で、ある程度認知されているジャンルといえば歴史程度か。だが、これもアメリカなどと比べると質量共に圧倒的に見劣りする状況にある。歴史以外で量的に多いのは作品論であるが、こちらは研究・評論と呼べるほどのレベルには至ってないであろう。歴史、作品論以外は、アニメーション学会で行われている個人単位の研究くらいか。
その意味で本書はタイムリーである。増えつつあるアニメを研究志望者のニーズに応えた企画であるので、それらの人間にとっての必読書となるであろう。本書によってアニメ研究志望者が増えることでアニメ総体の言論が活性化して欲しいものである。これは07年の拙著『アニメビジネスがわかる』執筆の目的でもあった(拙著がかなり引用されていたので少しはお役に立てたのではないか)。
評論を含む研究においては(実写)映画に比べてかなり立ち後れている。というか、圧倒的に人材の層が薄い。それほど大きいわけではないアニメというジャンルのことを考えれば致し方ないが、例えばキネマ旬報の執筆者を見れば層の厚さの差は一目瞭然。
次回、『アニメ研究入門』その2。
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