(2013年10月/細間宏通/新潮選書1,050円)
漢字が違うが同じ発音の名前。1960年生まれ。京都大学理学研究科博士後期課程修了(博士:動物学)を経て、現在、滋賀県立大学人間文化学部教授。「ことばと身体動作の時間構造、視聴覚メディア史を研究している」とのことである。ということで、著者にとって本書が最初のアニメ研究書。
内容はタイトルを読めば察しが付くかとは思うが、初期アメリカン・カートゥーンを著者の得意領域を駆使して読み解くというもの。これがなかなか面白い。取り上げられている主な作品は以下の通り。
▪ ジェームズ・スチュアート・ブラックトン『愉快な百面相』(1906)
▪ ウィンザー・マッケイ『リトル・ニモ』(1911)/『恐竜ガーティー』(1914)
▪ ディズニー『蒸気船ウィリー』(1928)
▪ フライシャー兄弟『ミニー・ザ・ムーチャー』(1932)/『ポパイ・ザ・セイラー・マン』(1933)/『ベティ博士とハイド Betty Boop M. D.』(1932)
▪ テックス・エイヴリー『迷探偵ドルーピーの大追跡 Northwest Hounded Police』(1946)
▪ ハナ&バーベラ『天国と地獄 Heavenly Puss』(トムとジェリー)(1949)
▪ フレッツ・フレレング『racketeer rabbit』(バッグス・バニー 1946)
▪ チャック・ジョーンズ『ちゃっかりウサギ狩り Rabbit Seasoning』(バッグス・バニー&ダフィ・ダック)(1952)
原書から得られた海外のカトゥーンに関する豊富な知識は有馬哲夫氏を思わせるが、それよりかなり専門的(音に関する知識も豊富)。一からつくらなければならないアニメーションにあって、制作物ひとつひとつ全部意味がある。もちろん、キャラクターの動き(や音楽)も然り。著者は単にそれを読み解くだけではなく、その当時の様々な文化・技術的側面を考え併せながら考察するなかなかの労作である。
すでにアニメも大学や大学院での研究対象となりつつある。それだけアニメに対する社会認知が進んでいるという証左であろうが、その結果本書のような研究書が生まれて来るのは非常に喜ばしいことである。宮崎駿の名前をタイトルに掲げた「感想文」のような評論が多い中、しっかりとした知識と識見に満ちた本書を読むことをお薦めする。
えーと、個人的なお願いであるが、どんどん時間を遡って日本のアニメの読み解きも是非お願いしたいものである。まあ、そんなことはじめたらご自分の研究は出来なくなると思うが、淡い希望を抱いてお待ちしております。
次回は『アニメ研究入門』について。
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