(2013年10月/野副正行/新潮社税別1,200円)
もし松下がユニバーサルを持っていたら
筆者はソニー入社後、20年間ほどアメリカ勤務の後、1996年よりSony Picturesの副社長、1999年共同社長に就任。2000年にソニーに戻ったとのことであるので、実質4年の在任期間であったが、その間に最下位であったスタジオの業績がトップになるまで伸びたという内容である。ある種のサクセスストーリーなので読んでいて気持ちがいい。そして、CG制作のソニーピクチャーズ・イメージワークスも担当していたとのことで当然興味が湧く。
バブル最盛期の1989年、ソニーがコロンビアピクチャーを買収したことをリアルタイムで覚えている人は結構いるだろうが、同時期に松下電器がユニバーサルを傘下に収めたことは次第に記憶の彼方のものとなりつつある。この両社のM&Aを仲介したのがマイケル・オーヴィッツMichael S. Ovitzである。http://ja.wikipedia.org/wiki/マイケル・オーヴィッツ
マイケル・オーヴィッツも最近では忘れ去られつつあるが、かつてはCAA(Creative Artists Agency)の設立者として一世を風靡した。
http://ja.wikipedia.org/wiki/クリエイティヴ・アーティスツ・エージェンシー
作品のパッケージングでハリウッドを席巻したCAAであるが、日本でオーヴィッツの名前が知られるようになったのは、ディズニーの社長に就任した時であろう。さらに、たった13ヶ月で退任し際に、退職金として3千800万ドル(45億6千万円)の現金と1億3,100万ドル(約157億円)相当の株を手にしたことでも有名になった(株主から訴訟が起こったが)。まあ、同世代で言えばドリームワークスのデヴィッド・ゲフィンと並ぶハード・ネゴシエーターなのであろう。
http://ja.wikipedia.org/wiki/デヴィッド・ゲフィン
ちょっと寄り道してしまったが、実際著者が在籍していた時代、SPEは実際どん底から一気に上に駆け上がったのである。なぜ、SPEがオーナーとなってどん底になってしまったかについて言えば、『Hit And Run』という本を読めばよく分かる。
この本、CEOのピーター・グーバーとジョン・ピーターズの二人に食い物にされたという内容ではあるのだが、ピーター・グーバーなどは、SPE解任後の足跡を見てみても、プロバスケットチームやメジャーリーグのチームの共同オーナーなどになっているところを見ても、決して経営者としての才覚がなかった訳ではないと思う。『成功者は皆、ストーリーを語った』という本も出している。まあ、要するに足下を見られたということなのであろう。
http://ja.wikipedia.org/wiki/ピーター・グーバー
そんなどん底の時代を耐え抜いたからこそSPEに今の栄光があるのだろう。松下電器にもずっとユニバーサルを持っていて欲しかったところだが。返す返すも残念である。
次回に続く。
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