(2013年8月/半藤一利・宮崎駿/ジブリ×文春文庫/税別570円)
贅沢な床屋談義
本書はこの「ジブリ×文春文庫」のための書き下ろし対談とのこと。『風立ちぬ』公開のためのプロモーションの一環であろうが、何とも贅沢な企画である。
夏目漱石からはじまるこの床屋談義であるが、『風立ちぬ』を意識してか、話の中心は昔日の東京や日露戦争からはじまって先の大戦のことなど。そして『風立ちぬ』のことや、それらの合間に自らの出自や両親のことなども登場する。これらの話が床屋談義らしくクロスしながら縦横無尽に繋がっている。
それにしても、宮崎監督の軍事知識は半端ではない。特に軍用機(だけではないのだろうが)対する知識はマニアを超えたレベルではないか。「心情左翼」のしばりがなければ、実際に軍用機をコレクションしてしまうのではないかと思えるほどである。
戦後、日本人の中から一番失われたのが「尚武」の心であるとされるが、戦争を体験した世代やそれに続く世代には、まだその感覚がある。たぶん、本当は宮崎監督も、「日本と中国の軍隊が戦うとどうなるのか」といった軍事オタク話をしたいのだろうが、自らの思想に縛られて言い出せないのであろう。是非一度解説を聞いてみたいものである。
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