〈中国からアセアンへのシフト〉
2013年アニメビジネス関連ニューズ7位は〈中国からアセアンへのシフト〉。
日本のアニメ業界は数年前から中国市場に魅力を感じて様々なアプローチを行ってきた。しかしながら、万里の長城のよう立ちはだかる規制(海外アニメの締め出し、検閲制度)の壁や政治的軋轢の影響をまともに受ける文化(政治)的風土によって共同製作は遅々として進まなかった。
小生が知りうる限り、ここ数年間で共同製作として成立したのは、『最強武将伝 三国演義』と『チベット犬物語 ~金色のドージェ~』、それに『トレインヒーロー』程度だったのでは。この中でも、何とかビジネスとして機能したのは『トレインヒーロー』くらいで、前の二つはかなり苦戦したのではないか。
三国志の製作会社であったフューチャープラネットは倒産、チベット犬も中国で公開されたのか定かではなく(まあ、チベットというテーマ自体が中国では問題なのであろう)、日本ではテアトル池袋でのモーニングショー公開と恵まれたとは言えないビジネス環境であった。
そんな中国とのもやもやした状況に見切りをつけるきっかけとなったのが尖閣問題であった。別にアニメ業界に限ったことではないだろうが、日本人であれば尖閣諸島における中国の態度や反日デモを見て、口には出さないものの、「こりゃダメだ」と思ったことであろう。
ということで、一昨年あたりから急激なアセアンシフトがはじまった。インド版巨人の星『スーラジ ライジングスター』、シンガポール政府系ファンド出資による『あらしのよるに』、シンエイ動画とリライアンス・メディア・ワークスによる『忍者ハットリくん』など。
さらに、アニメに留まらずインドネシアで『ドラゴン桜』現地版リメイク、インドネシアで伊藤忠・石森プロが組んで特撮ヒーローキャラクター、「ビマ・サトリア・ガルーダ (Bima Satria Garuda)」を提供。
また、アジアでスカパーなど放送50社がアニメや日本の音楽番組を放映する「日本チャンネル」を解説するなどといった動きが続いている。もちろん、中国と対等なビジネスが出来るようになればいいのだが、安倍首相靖国参拝時の中国政府の反応を見ても、それは当分難しいのではないかと思われる。
と言いながら、今回、反日デモ等が起きないのは色々な事情があるからであろう。もし、また反日デモが起きれば日本の中国離れは決定的になる。経済的に見るならば、日本にとってもその打撃は大きいが、尖閣以来日本からの投資が大幅に減った中国にとっても大きな問題となる。
さらに、中国国内の政治状況を見ると、反日デモが反政府デモになる可能性もあるという。いずれにせよ、しばし静観というところであろうか。
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