アニメの仕事3〜大塚康生3部作
『作画汗まみれ 増補改訂版』(徳間書店/1995円税込)
『リトル・ニモの野望』(徳間書店/1470円税込)
『大塚康生インタビュー』(実業之日本社/1995円税込)
大塚康生氏は言うまでもなく日本のアニメーターの最高峰に位置する人間である。日本初の長編カラーアニメ『白蛇伝』から『太陽の王子ホルスの大冒険』などの東映動画作品を経て、『ムーミン』『未来少年コナン』『ルパン三世 カリオストロの城』などで作画監督を務めた。
今回取り上げる本は今さらここで取り上げるまでもないほど有名ではあると思うが、アニメビジネスという観点で改めて三冊を通して読むとその内実について結構書かれてあり面白い。
三部作と書いたがそれは著者が意図したものではなく私が勝手に命名しただけであるが、まず『増補改訂版 作画汗まみれ』を読むことをお勧めする。アニメ創世記や発展期の事業がよくわかりアニメビジネスにかかわる人間としては必読の書である。
東京ムービー(現トムス)の創立者である藤岡豊を描いた『リトル・ニモの野望』もまた非常に興味深い一冊である。マンガの原作ばかりの子ども向けアニメにもの足らず、アメリカの国民的作品であるウィンザー・マッケイの『リトル・ニモ』の製作に挑戦した藤岡について大塚氏はこう述べている。
「『ディズニーに負けない』を掲げた製作者は日本では東映の大川博社長と手塚治虫さんだけですが、それを具体的にやろうとしたのは藤岡さんただ一人」
藤岡豊が挑戦した大作長編アニメーション『リトル・ニモ』は残念ながら成功しなかったが、そこには日本のアニメの問題点が凝縮されている。もし藤岡がテーマを誤らなければジブリの前に東映動画以来の本格的劇場長編アニメが復興していたかも知れない。
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