アニメの仕事4〜プロデューサー1
石川光久『雑草魂』(日経BP/1,500円税別)
日本には監督をテーマにした本は多いがプロデューサーについて書かれたもの(あるいは書いたもの)が少ない。アニメビジネスの要となるのはプロデューサーなのでもっと読みたいと思うのだが、まだその職制に対する認知が低いせいか余りお目にかかれない。
プロダクションIGが上場した時には正直驚いた。失礼ながらとてもビジネス指向の会社には見えず、その時々の経済的事情で作品に制約を加えるようには思えなかったからである(回りくどい言い方だが、要するにいい作品をつくるために赤字覚悟でやるということ)。それで結果はというと社長の石川氏の言動などを見ても上場前とそのスタンスは余り変わってないようである。
社長の石川氏はアニメの制作現場に対する条件を改善すべきだと以前から主張しており、実際プロダクションIGにおいてはそれが実行されている。その意味で上場はアニメスタジオの地位向上をはかるという石川氏の強い思いの表れであったのだろう。
ただし上場後の業績はパッとしない。売上はやや減少、経常利益はかなり落ち込んでいる。これは『攻殻機動隊』『イノセンス』『Blood+』といった大作が現在ないこともあるが、根本的にはヒット作品、ヒットキャラが少ないからであろう。アニメスタジオは制作しているだけではほとんど儲からない。作品がヒットし、DVDなりキャラクターなりが売れて出資のリターンや印税が入ってこないと本質的に潤わないのである。
プロダクションIGは来年押井守監督の新作『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』を送り出す。またもや宮崎作品(『崖の上のポニョ』)とぶつかるが仕上は順調であると聞く。押井守監督の作品はプロダクションIGの顔とも言えるが、氏が長年ここを基地として映画を撮り続けているのも石川氏の魅力に依るところが大きい。本書ではその一端を伺い知ることができる。
コメント