アニメの仕事2〜原芳子『アニメーション映画に魅せられて』
(新風舎/1,660円税別)
日本で最初の本格的商業アニメーションをつくった東映動画(現東映アニメーション)は親会社の東映の影響が至る所に見られ、それ以降に生まれた多くの独立系テレビ中心の制作会社と異なる職制が見受けられる。
前回紹介した『すごい!アニメの音づくりの現状』に登場する音響監督という職制は東映にはない。これはアメリカも同様で一般的にやはり映画スタジオのシステムに従っていると思われる。
また東映アニメーションには「監督」という職制がなかった。「監督」という呼称は親会社の東映の実写本編にしかつかわれず、東映アニメーションでは「演出」と呼ばれていたからである(最近ようやく監督という言葉がつかわれるようになった)。
今回紹介する本を書かれた原芳子さんは、やはり東映アニメーションにしかない職制である「記録」を長年担当されてきた。これも東映という映画スタジオの職制を引き継いだからであろう。
アニメの記録という職制には正直ピンとこなかった。通常実写映画で記録といえばスクリプターといってシーンや芝居がうまくつながるように各カットに関するあらゆる記録を留めておくということが頭に浮かぶが、アニメにおいては果たしてどのような仕事なのか?
読んでみてわかったのは東映アニメーションにおける「記録」という仕事は「演出」の仕事に近いということであった。ここでいう演出とは劇場アニメなら監督を主に技術的な側面で補佐し、テレビシリーズならば総監督やシリーズ監督の下につく各話演出と呼ばれる存在である。ひとことで言うならば他社の演出の仕事から実際の演出を差し引いたクオリティチェックやリテイクなどを中心とした仕事と言えるであろう。
女性が書いたアニメの仕事に関する本では『アニメーションの色職人』(徳間書店)が面白い。著者の柴口育子さんが描くところの保田道世さんはジブリの作品を多数手がけた色彩設計の大家である。アニメの現場を志す女性は一度手に取ってみるとよいであろう。
>著者の柴口育子さんは
育子さんはインタビュアーで、語っているのは保田道世さんです。
NHKで今度の新作のドキュメンタリーをやっていましたが、その中で宮崎パパが息子の映画を彼女相手に愚痴っています。そのとき監督、コーヒーを直々に彼女に入れてあげるんですね。『紅の豚』のワンシーンのようでした。
投稿情報: | 2007/10/15 20:12