アニメの仕事1〜『すごい!アニメの音づくりの現場』ハイパーボイス監修(雷鳥社/1,600円税別)
セリフ、音楽、効果音といった音の要素が映像にもたらす力は大きいが、日米のアニメ制作で最も異なっている点はそこに対する考え方であろう。日本は映像ができてからセリフや音楽をレコーディングするがアメリカはまずそれらを先に録音する。前者をアフレコ(after recording)と後者をプレスコ(pre-scoring)という。
またアメリカではセリフ入れなど音の演出作業なども監督が行うのが基本であるが、日本では東映アニメーションを除いて音響監督に任されている。これは音に対する考え方の違いにもよるであろうが作品が多すぎて監督が音響の作業まで物理的にできないという事情もあろう。実際比較的じっくり作品に取り組める劇場アニメでは監督がより音の演出にかかわる比率が多くなる。
そのため日本の音響監督の守備範囲は大きい。演出の意図に基づき作品総体の音のグランドデザインからセリフ入れ、音楽、効果音に関する作業、そして映像とのミックスまでが責任範囲である。
この本は日本のアニメ制作において音の要となる音響監督が数多く紹介されている。読んでいて面白いと思ったのは音響監督の出身がバラエティに富んでいることである。音響ミキサーのアシスタント出身が多いものの、前職が俳優のマネージャー、ラジオ番組の制作、役者など多岐に渡っている。アニメ制作における職種全体にいえることであるが要は音響監督という仕事がよく知られていないせいであろう。
コメント