梶山寿子『トップ・プロデューサーの仕事術』(日経ビジネス文庫714円税別)
様々なコンテンツジャンルのトッププロデューサーに迫る
著者は過去にスタジオジブリの鈴木敏夫氏を描いた『ジブリマジック』(講談社)やプロダクションIGの石川光久氏の『雑草魂』(日経新聞社)といった書籍でアニメプロデューサーをテーマにしてきた人間であるが、この『トップ・プロデューサーの仕事術』はアニメだけではなく様々なジャンルで活躍するコンテンツプロデューサーの姿を紹介したNIKKEI NETの連載を再編集した文庫作品である。
登場するのは「視聴率男」日本テレビの五味一男氏、アートディレクターの佐藤可士和氏、フジテレビの映画を一手に取り仕切る亀山千弘広氏、シャ乱Qのリーダーはたけ氏、ポケモン・ブランドの司令塔石原恒和氏、「世界のキタノ」の女房役である森昌行氏、アメリカで日本マンガ文化を広めたビズ・メディアの代表福原秀巳氏、プロダクションIGの石川光久氏、シネカノン代表の李鳳宇氏といった面々である。
アニメに直接関係あるのはプロダクションIGの石川光久氏だけであるが各々に意義深い含蓄が散見できる。例えば日テレの五味一男氏である。途中入社の氏は、一般のテレビ局職員よりは客観的に現状を見られるようで、テレビ局の今後のあるべき姿について次のように述べている。
「それに、地上波には影響力があるから大丈夫だ、と既得権益の上にあぐらをかいていると、とんでもないことになると思います。やはり時代に応じたビジネスモデルが必要でしょう。将来的には有料のサービスにして、見たいという方により質の高いものを提供する-そういう形が理想ではないかと15年くらい前から主張していますが、やがてそういう時代が来るのではないでしょうか」
有料に耐えうるサービスこそが今後のテレビ局の理想という五味氏の主張は実にもっともであると感じられる。広告収入にとらわれず、もっと高い目線で事業を展開しなければならないということであろうが、これこそ現在テレビ局に最も欠けている国際競争力をつける上での重要な視点ではないだろうか。
コメント