岡本一郎『グーグルに勝つ広告モデル』(光文社新書/720円)
アニメウィンドウの模索を考える
本書はメディアマーケティングについての興味深い深い論考である。タイトルにグーグルという名前がついてはいるが、それ自体の論及よりもテレビやラジオ新聞雑誌といったメディアに対する知見についての考察の方が多く、今後のアニメのウィンドウ、マーケティングを考える上でも参考になる。
内容をかいつまんで述べると要するにインターネットの伸張によって既存のメディアがどう変化してゆくのかということであるが、当然その中で一番語られているのでマスメディアの王者テレビについてである。その将来像について著者はこのように語っている。
「将来的には番組という枠組みは解体されてコンテンツはメタデータを持ったモジュールに分解され、それを視聴者が検索やリコメンデーションを通じてスキップしながら楽しむ、という消費形態に変わるかもしれません。これはつまり、今テレビ局が中央集権的に行っている編成という機能を、視聴者一人ひとりにもたせることにほかなりません」
著者はこのサービスをオンデマンドのポイントキャストサービスと形容しており、まるでアクトビラを思わせるようなサービスであるが(まだ試したことはない)、YouTubeのトラフィックの多さを見ていればなるほどうなずける。「見たいときに、見たいものを、見たい部分だけ、見たい」というのが大多数のユーザーのニーズになっており、いずれそのような時代が訪れるのは確かであろう。
問題はそうした状況に対応するアニメのウィンドウ政策がほとんど考えられていないというところにある。つまりポストテレビ以降のビジネスモデルがまだ見えておらず、そこがアニメ産業の抱える最大の悩みどころであるのは確かだ。既にこの問題に自覚的に取り組んでいる企業もあるが、それはごく一部であり大多数は日々の業務に追われている状況。なるようにしかならないという考え方もあろうが、転ばぬ先の杖はやはり必要であろう。
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