2Dアニメと3Dアニメのはざまで〜『スカイ・クロラ』に対する若干の補足5
3年後に見られる秘術
予測せざるアニメーターの払底状況におそらく愕然とした押井監督は、「3Dキャラクターアニメーションと呼ばれる<秘術>を習得するしかないのだ、という覚悟は当然の帰結でなければなりません」と決意するに至るのだが、もちろんそれはそれなりの勝算があってのことである。
「ただ何となく、そちら(3D)には確実に風が吹いている。今までずいぶん逆らって舵をとってきたけどね、そろそろこの風には逆らいきれないかもしれないって……。そういうことなんだよね」という視点は演出者としての本能的嗅覚であろうが、その根底には3Dアニメでも勝てるというしたたかな計算があるように見える。そして、その根拠を『メタルソリッドギア4』に垣間見たのではないか。
「3Dだって作ったモデルをそのまま律儀にずーっと同じように動かしてるわけじゃないよ。とにかく、いろんな裏技があるんだよ。要するに、アニメーションをするってことは、モーションをとるっていうことだけじゃないからね。だから僕がもしやるとしたらなら、もちろんモーション(キャプチャ)は使わないよ」と語りながら、「まあ……それはね。それこそ、最大の企業秘密に属することなんでね(笑)。」と付け加えるその言葉の裏には既に「秘術」を見い出したニュアンスが感じられる。
押井監督は更に語る。「今の3Dのキャラクターアニメーションがもっている、さまざまな技術的な可能性を生かすも殺すも、それにふさわしい「映画を発明」できるかどうかにかかってるんだよ」「口はばったいこと言うようだけど、それを見つけること、その映画を発明することが、僕の仕事なんですよ。そして、おそらく僕が最適任者なんですよ」
聞くところによると既に押井監督は次回作の制作に入っているという。完成は3年後。おそらくその作品は日本のアニメの新しい形を提示することになるであろう。「微温的な共同性に浸って慣性質量のみを増加させつづけてきたアニメーションの世界にその秘術を期待することは、残念ながら望むべくもありません」と述べた本人がアニメーションの世界そのものを変えようとしているのだ。
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