NHKスペシャル「日本とアメリカ 日本アニメvsハリウッド」
今週月曜日にNHKスペシャル「日本とアメリカ 日本アニメvsハリウッド」がオンエアーされたがご覧になったであろうか?「日本とアメリカ」というテーマで、1回目が「グローバル化への苦闘」、2回目がアニメ、3回目が「ホワイトハウスに日本を売り込め」(11月2日放送予定)であるから、過分なる評価ではなかいかとも思うが、まあ、それだけ日米での協業が進んでいるということであろう。
番組を見た方は気づいたかも知れないが、この「日本とアメリカ 日本アニメvsハリウッド」で私の名前が協力にクレジットされていた。具体的に何をしたかというと、現在日米で進んでいる共同作業などについての情報を提供したり、アニメ産業に関する質問に答えたりというようなものであった。 映像的には、おそらく取材映像の関係もあってアトムの3Dアニメリメイクとアフロサムライの米国展開が多かった。アトムについては製作会社であるimagiに依頼されて手塚プロの清水氏を紹介し、アフロについてはマッドでデモリールをつくった時に担当していたという経緯もあったのでなかなか感慨深いものがあった。
NHKスペシャルで出てきたような日米の共同作業にはが幾つかのパターンがある。
1) 日本の原作をアメリカで実写化、あるいは3Dアニメ化(アトム、スピードレーサー、ドラゴンボールなど)
2) アメリカの題材を日本で2Dアニメ化(ハイランダー、スティッチ!)
3) 海外狙いの展開(アフロサムライ)
以上であるが、いま一番多いのは1のパターンではないかと思う。最大公約数を求めなければならないハリウッドではどうしても作品傾向が硬直化しがちである。ある種ニッチであるからこそ奔放な発想が許される日本のマンガやアニメは彼らにとって魅力的な原作供給源になるのは自然の帰結であろう。
2つ目は古くから「合作」と呼ばれていたパターンである。昔と比べて予算も上がり、日本サイドのクリエイティブ度は上がっているが、基本的には以前同様制作受託である。これに関しては、2Dアニメの現場が少なくなっているアメリカでは2Dアニメは日本か韓国につくらせておけばいいという考えが、特に最近垣間見えるような気がする。
3のパターンは余りない。今まで海外狙いで製作された作品で当たった試しがほとんどなかった。その意味でGDHの取組は成功であろう。ただし、通常の倍かかっていると番組で言ってたコストを考えるとDVDセールスが30万程度ではそれほど儲からないのではないか。アフロの場合、日本ではほとんど売れていないようなのでアメリカ市場がメインになるかと思うが、原盤のライセンス供給だとおそらく数十万枚、あるいはミリオンの声を聞かないと大成功とは言えないであろう。
GDHのビジネスは意欲的であり日本のアニメ界にとっては刺激的なものが多い。ビジネスモデルも従来にないものである。しかし、ひとつだけ足りないのがヒットである。それも大ヒット。製作会社としてのアニメスタジオの歴史を考えると、どこもバカ当たりしたヒットキャラクターを抱えておりそれが財産となっているケースが多い。東映アニメーションしかり、トムスしかり、サンライズ然りである。伝えられるように経営的には苦境のようだが、是非ここは一発当てて欲しいと思う。
1、2、3といったケース以外に本当は共同製作というパターンがある。ファイナンスから実際の制作まで共同で行うというものだが、アニメに関してこれが行われたパターンはほとんどない。パッと思いつくのは20年ほど前にトムスの創業者である藤岡さんが製作した『NEMO/ニモ』くらいなものである。ただ、これもファイナンスは日本だけであったので、その意味では共同とは言えない部分がある。
ということで、本当の意味での日米共同製作、共同作業はまだほとんどないと言ってもよい(日米の共同作業の難しさは『黒澤明vs.ハリウッド―『トラ・トラ・トラ!』その謎のすべて』読むと実によくわかる)。それは日本のアニメ産業にとっての大きな課題である。果たしてハリウッドでの実写化がプロパティの最終展開なのかという問題も含め考えていかなければならないであろう。
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