Vol.15〜第一部手塚治虫とマンガ〜第二章手塚治虫成功の秘密
1−1 環境①〈時代・社会環境〉
1−1−1 戦前真っ暗史観の生成
手塚治虫が生まれ育ったのは太平洋戦争以前の日本である。いわゆる戦前と呼ばれる時代であるが、それに対し我々が思い浮かべるその一般的なイメージは「暗い」というものである。確かに日中戦争から太平洋戦争と打ち続く戦争のため暗い時代に思えるのは致し方ない面もあるが実際はどうだったのであろうか。
実は1954年(昭和29年)に生まれた典型的な「戦後民主主義者」の私が持つ戦前のイメージもやはり相当暗く、特に大正デモクラシー以降、昭和に入り終戦に至るまで時代は正直「真っ暗」という印象であった。その当時の世界大恐慌、満州事変や五・一五事件、二・二六事件に見られる軍国主義の台頭、社会主義者に対する弾圧といった事件を見るにつれ日本の歴史の暗部といっも差し支えないのは確かであろう。
しかし、最近このような戦前に対する歴史観は、「東京裁判」に代表される「ネガティブな歴史」観を日本国民に植えつけるプログラムが功を奏した結果であったことが次第に明らかになってきた。例えば、GHQが策定した「3R、5D、3S政策」の具体策である「ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム(日本人洗脳計画)」は、「戦争についての罪悪感を日本人の心に植えつける」ことに成功した。ドイツのように負け馴れている国と違い、かつて一度も敗戦体験のないうぶな「神国」は敗戦のショックによる虚脱感もあってか、戦勝国の歴史観を言われるがままに丸飲みにしてしまったようである。
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