手塚治虫の天賦の才を支えた資質の秘密
本日から手塚治虫成功の秘密の大きな要素である本人の資質について触れてみたい。
手塚にはその資質を象徴すると思われる幾つかの「伝説」がある。曰く、「コンパスよりも正確に丸を描く」「定規をつかわずワク線(コマの囲みの線)を正確描く」「絵コンテを描かず、しかも下書きなしでいきなりペン入れをする」「人の数倍の早さでマンガを描く」「いっぺんに四つの原稿を同時進行でかつ交互に描く」「マンガのアイデアが尽きない」「生涯に描いたマンガは16万枚。週間誌に四本連載して40年間」といったエピソードである。このような手塚の超人的な作業振りは広く知られているが、それを支えた資質とはどういうものであったのだろうか?
手塚治虫の資質①〈天賦の才能と限りない向上心〉
天賦の才や環境に恵まれただけでは花咲かない
前項で見たように手塚治虫は最高の環境に生まれ育ったが、それを十分生かせる天賦の絵画的才能があった。子ども時代に描いたマンガはもちろんのこと、中学時代に昆虫を描写した細密画は特別な教育を受けていないことを考えれば驚異的なレベルにある。
しかしながら、この才能に関して検証するのはなかなか困難である。スポーツや音楽、また絵画といったものならある種比べようもあろうがマンガの場合、優劣を判じる基準ないために非常に難しい。手塚の画に対する才能は当然認めた上でのことだが、本当に評価すべき資質はその向上心にあるのではないかと考える。
手塚は才能だけで「マンガの神様」とまで呼ばれるようになった訳ではない。おそらく画力でいえば世の中には手塚以上の天賦の才を持った人間は沢山いたであろう。実際世の中には幾ら環境に恵まれていてもそれを生かせない人間が沢山いる。では成功を分かつものは一体何であろう。
もちろん「運」もあるだろう。特に勝負の世界ではこれが大きく作用する。しかしながら、これはコントロールするのはなかなか難しい。そうした状況の中で、激しい競争の世界でやってゆくために確実な方法として言えることは、自分を磨き続ける姿勢であろう。どれほど才能に恵まれていても、身体の手入れや技術の習得を怠ればたちまち脱落してしまうのがプロの世界である。より高いレベルに上がるための向上心がなければ競争には参加できないのである。
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