『ジャパンクールと情報革命』(奥野卓司/アスキー選書752円税別)1
アニメにとって便利なツールに過ぎなかったデジタル技術
色々と示唆に富んだ著作である。まず日本とアメリカのIT革命における受容の違い。アルバート・ゴアが行った情報スーパーハイウェーの場合、基盤整備を行うことで、「情報社会の新興事業の開発と発展を促し、『第三の波』に描かれたようなアメリカ型情報社会の実現を目指した」。
それに対し、日本におけるIT革命は、「既存の製造業による生産と消費を活性化させることであった。従って日本のIT革命が目指したのは、製造業を中心とする既存の産業を延命させ、モノづくりが得意とされた日本の国力を回復することであり、アメリカのように大量の情報のやりとりから新しい文化や産業を生み出す発想は皆無だったと言ってよい」とあるが、これがよかったか悪かったかの価値判断は別として全く同じようなことがアニメ業界でも起こったのである。
アニメにとってのIT革命はいうまでもなくデジタルによるものであるが、その粋は何といっても3Dアニメ(CGアニメ)である。ハリウッドがそれを新しい表現技術として真正面から受け止めたのに対し、日本は既存の2Dアニメの生産性を高めるために、つまり便利なツールと考えたのである。
その結果、アメリカは追随を許さぬ3Dアニメ大国を築き上げた。翻って日本はどうか。あくまで2Dアニメにベースを置き、そこにデジタル技術を投入することで日本独特の2.5Dともいうべきアニメ表現をつくり上げた。幸い2Dアニメに関する技術は日本の独占状態なので工業製品のようにアジア諸国の低価格製品に脅かされるようなことはなかった。しかし、相変わらず行く手にはデジタルをどのように処するのかという大命題が横たわったままである。
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