『現場力革命』(石川光久/K.K.ベストセラーズ1,305円税別)
プロダクションIG(IGポート)の秘められた戦略
以前紹介した『雑草魂—石川光久 アニメビジネスを変えた男』の著者は『ジブリマジック—鈴木敏夫の「創網力」』も書いている梶山寿子氏であった。そういう意味で本書は石川さん初の著作である(語り下ろしではあるが)。
ここでも紹介するつもりであるがプロダクションIG所属の神山健治氏も『神山健治の映画は撮ったことがない〜映画を撮る方法・試論』という書籍を出した。押井守氏の著書が多いこともあるがジブリに次ぐ刊行数は会社の勢いの現れであろうか。
そんなIGで最近驚いたことは会社移転についての件である。長年住み慣れた国分寺を離れ三鷹駅のすぐそばに引っ越すのだが、移転先の現河合塾美術研究所の評価は土地2億5500万円、建物1億9500万円の計4億5000万円。これを現金で支払う予定であるという。
計4億5000万円をキャッシュで支払うということにも驚いたが、もっと驚いたのはIGが24億円もの現預金を保有しているということである。勝負に出たイノセンスの成績がいまいちであったと思っていたが、ふーむ、結構儲かっているようである。
昨年経産省が呼びかけた集まりがあってそこに石川さんも出席していた。発言を求められた石川さんは現状のアニメ産業のことから自社のことまでドライブ感十分に話しはじめたが、例によって話があちこち飛ぶ。「要するに何が言いたいのかと言うと」とまとめようとするのだが、一向に結論が見えてこない(が、なぜかとても説得力がある。人徳の成せる技であろう)。竹下元総理ではないが「言語明瞭意味不明」状況の末に飛び出たのが、「日本の法人税は高い」ということであった。
脈絡なく唐突に出たと思えたのが法人税。高いと感じるほど利益を出しているからこその話であろう。思えば24億円の現預金を裏付ける発言であったのだ。話はよく飛ぶが頭の中ではしっかり計算が出来ているのであろう。
ということで、本の中味にほとんど触れられなかったが、経営者としての石川さんの哲学がよくわかるので一読して欲しい。いわゆるMBA的なノウハウは一切なく自分の言葉で語られる経営哲学である。地(現場)に足の着いた言葉ばかりである。IGが躍進する余地はまだまだあると見た。
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