アニメの教科書(アニメ人材育成・教育プログラム製作委員会/10,290円)
アニメ業界を目指す人間のための教科書
アニメの教科書(テキスト)は東映アニメーション、手塚プロダクション、サンライズ、スタジオ4℃、シンク、ハーフエイチ・ピー・スタジオ、セルシス、オートデスク、デジタルコンテンツ協会、デジタルハリウッド、日本電子専門学校、日本工学院専門学校、東放学園映画専門学校、東京都、日本動画協会などが製作委員会を組み出資して製作したものである。自分も執筆陣として参加しているからという訳ではないが、今までこの種の取組がなされてなかったので評価に値する試みであろう。
アマゾンでも買えるが、本書を置いている秋葉原アニメセンターの話を聞くと売れ行き好調とのこと。4月に入りアニメ学部・学科のある専門学校で教科書としてもつかわれるケースがあると聞くのでそれなりの引きはあるようだ。
執筆陣は手塚プロの清水義裕氏、81プロデュース、ハーフエイチ・ピースタジオの南沢道義氏、シンクの森祐治氏、ライターの斎藤睦志氏、藤本厚氏、それに私である。
本書は4冊の本(4編目は原画素材DVD)からなる合冊形式になっており、それぞれ価格が付いているのでバラ売りも可能のようである。
1編目は「日本のアニメ産業」ということでアニメのビジネス面が中心となっている。企画からはじまるアニメ製作のフロー、市場動向、著作権、資金調達、海外アニメの動向などである。それに、見ておくべき日本のアニメ100選、現場の声(小学館のプロデューサー久保雅一氏、監督高橋良輔氏メカニックデザイナー大河原邦男氏など)、アニメ用語集などがついている。
2編目は実際の制作工程について書かれてある。企画書からはじまり作品として成立する過程から、プリプロからポスプロに至る実作業について書かれてある。これを見るとアニメがどのようにつくられているのかがわかる。
3編目は作画を掘り下げ、アニメーションを中心に背景、色彩の手法が書かれている。そして4編目が資料DVDである。
全体を読むとアニメ製作・制作に関する概要がほぼつかめる。初心者向けとしてはなかなかいい内容ではないか。しかし、ひとつ難点なのは税抜9,800円という価格であろう。ちょっと高い。刷り部数が余り多くないせいであろうが、対象を考えてもう少し低く設定してもらいたかった。
尚、作画をひり下げようという向きには、ロジャー・ラビットのアニメーション監督であるリチャード・ウィリアムズが書いた『アニメーターズ・サバイバルキット』(グラフィック社/4,500円税別)がよいと思われる。アニメーターではないので詳しくはわからないが、展開されている理論には説得力がある。
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