『「パクリ・盗作」スキャンダル事件史』(別冊宝島編集部編/宝島文庫533円税別)
盗作・パクリ事件は著作権を知る上で有効なケースステディ
タイトルはおどろおどろしいが、ことの本質は著作権にあるので参考になる。全編を通じて著作権問題のオンパレードである。
マンガ、アニメの世界(音楽もそうだが)においてパクリ・盗作問題を語り出すと結論が出ることはない。意識的な剽窃、盗作、パクリ、オマージュ、あるいは本書にも登場する「ワン・レイニイ・ナイト・イン・トーキョー」の楽曲のように偶然似ていたことが判例で証明された場合もある。
世界で自分と同じことを考えている人間は何人かいてもおかしくない。また、シンクロニシティという言葉があるように、同期的に似た発想を得られるケースもあるだろう。
さらには、かつて影響を受けた作品の存在を忘れてしまい、自分のクリエイティブであると考える場合もあるだろう。冗談ではなくクリエータの中にはそういう種類の人間が多い。
これはいい悪いの問題ではなく、彼らが虚構を信じ切る力がある証拠であろう。完全に信じ切ってしまうのである。宇宙戦艦ヤマトの松本零士氏などもそのケースであろう。ご本人は自分がヤマトの原作者であると主張されているが、参加の経緯(キャラクターデザイナーとして起用された)からしてそれは有り得ないし、プロデューサーで原作者でもある西崎氏と争って裁判でも証人になった人々は口々にヤマトは西崎氏のものであると証言している。
従って裁判の結果としてはほぼ100%西崎氏の完勝であったが松本氏は控訴、西崎氏の諸事情(収監中、健康問題など)もあって結局和解となった。これによって、松本氏がヤマトの共同原作者と認定されるようになったが、事実としてヤマトはあくまで西崎氏が考えたものである。(蛇足だが一連のヤマト作品の映像著作権は東北新社に著作権譲渡されている。従って西崎氏が持っているのは原作権のみである)。
現在、『新宇宙戦艦ヤマト 復活篇』(仮題)が製作されているという。何度も浮上しては消えた企画であり今回の行く末も懸念されるが、アニメフェアで東北新社のブースで大きく打ち出されていたのでおそらくが大丈夫であろう。
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