『幻のB級!大都映画がゆく』(本庄慧一郎/集英社新書740円税別)
1,294本もの映画を製作した会社
この本に出会うまで大都映画という存在を知らなかった。昭和2年から17年までとはいえ通算で1,294本もつくったこのスタジオの映画を見た記憶がないのである(特に昭和8年から昭和16年にかけては松竹や日活を上回るナンバーワンの製作数を誇っている)。
その理由としては、「女給と工員と丁稚や子守っ子たちに喜ばれればいい」作品を粗製濫造し、「B級三流映画」と言われ続けたこともあろうが、映画史にその名を留めておらず、かつほとんどフイルムが繊細で焼失し現存していないことによることも大きいようだ。
この大都映画を創設したのは一回の土工から土建屋となり、次ぎに新聞社を買収して東京都の府会議員にまでなった立志伝中の人物、河合徳三郎であった。そのような人物が興した映画製作会社が大都映画だったのである。
大都映画の製作ペースを見ているとまるでテレビ番組の様で年間110本もつくった年もあるほどだ。表紙の腰巻きにある映画のシーン(戦前であるがロボット?が登場している)から推測するとおそらく内容的には創世記のテレビドラマに近いものがあったのではないか。怖いもの見たさかも知れないがWOWOWで特集してもらえないものだろうか。
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