オーディオ・ビジュアルのパラダイムをつくったMac
今回の報道の中で、ようやくジョブズの業績にピクサーがあるということが大きくピックアップされるようになった。しかし、思えばDTM(ディスクトップ・ミュージック)にも大変な貢献をしている。何故なら、Macがなければこの領域は成立しなかったからである。
今から四半世紀以上前、安全地帯のレコーディングに立ち会うためスタジオに行ったとき、何故かローディもM君(明治大工学部出身)がコンソールの前でカチャカチャ音を立てていた。何やら四角い箱の前のキーボードを打っているのだが、思えばそれがMacとの出会いで、要するに彼はデータの打ち込みをやっていたのである。
もちろん、まだパソコンをやっていなかった身としては(会社にもまだパソコンは導入されていなかった)DTMに知識があろうはずもなく、安全地帯のメンバー以下、Macの打ち込みを待ち続ける不思議な光景であった。一時間3万円也のスタジオをMac一台で占領していたという、今からすると考えられないような贅沢をしていた(それからも、しばらくはそんなプリプロを1h3万円スタジオで続けていたが、ちなみに、M君はその後安全地帯のステージに立つようになり、サポートメンバーとして紹介されるようにもなった。
その頃からMacは音楽制作には欠かせないツールになった。そんなこともあり、音楽人のがMacを使う比率は非常に高いはずである(流行やデザインに聡いミュージシャンなどは、ダサいウィンドウズなんか使えるか、といった気風もあるが)。なので、ジョブズがiTuneをスタートさせるにあたり、音楽界を口説けたのも、業界全体がMacの恩恵に預かっていたという事実も影響しているはずである。
DTMのきっかけになったパソコンをつくり、そしてピクサーのオーナー。ジョブズは現在のオーディオ・ビジュアルの大本に位置しているのではないか。さらに、その視聴環境も大きく変えた。おそらく、今後ジョブズのそれらの業績に対する評価が浮上し、さらに「神格化」が進むであろう。
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