第六章「激動の10年 その他篇」海外販売6
All Nippon Entertainment Works6
All Nippon Entertainment Worksは果たして儲かるのか?
前回このプロジェクトの効率性の話をしたものの、例え確率は低くともハリウッド一発当たれば帳消しになるという考えもあるが、実際どうなのであろうか。そんなに儲かるのか?
ハリウッドにおける原作の位置づけは、あくまで「素材」としてである。映画製作の主体はあくまでプロデューサーであり、原作はそのひとつの要素にしか過ぎない。日本のように原作次第という考え方とは大きく異なる。まして著作人格権のない国である。変更に躊躇はない。あくまで、自分の映画のためのひとつの要素でしかないのだ。当然であるが、決して映像作品のコピーライツに原作者の名前をクレジットさせることなど考えない。
従って、原作は取得の時点で完璧な権利処理がなされる。当然日本の法律よりもスタジオとの契約が優先され、条件は交渉次第。有利に進めようと思えば、余程原作にパワーがないと無理。持ち込みされた様な作品は、幾ら内容が良くても有利に条件交渉が進めるとはとても思えない。
さらに、映画を運用して以降の分配に預かれるかどうかは非常に難しい(スピルバーグくらいの実績が必要)。それによって、原作が売れるというメリットはあるかも知れないが、いずれによせ映像化(実写映画化だけではなく、テレビ、アニメも含めて全部)を含め、商品回りなどの権利を押さえられてしまう可能性は高い。日本のように「原作者様」としての立場は有り得ないのである。
また仮に分配が可能になったとしても、悪名高き「控除」がある。ハリウッドで「ネット利益参加」となれば、まあほとんど入金がないと考えてもいいだろう。実際、過去の日本のプロパティであっても、実益は驚くほど少ない例が多い。アウェイでそんなに簡単に儲けさせてはくれないのが常識である。
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