日本のアニメに望まれているもの
今回の動漫基地・政府関連者とのやり取りで日本のアニメ事業者に対しての期待は言葉の端々に感じられた。しかしながら、実質上の日本のアニメ放映・上映・販売禁止状態にしてまで自国アニメ産業を育成しようとしているこのような状況の中にあって中国政府としては日本のアニメ産業に対し何を望んでいるのであろうか。
ここ2〜3年の中国アニメ制作の急増振りには目を見張るものがある。これからすると既に制作能力や生産性は十分あると見てよい。しかしながら、これだけの量を生産しながらひとつ中国アニメに欠けるものがあるとしたら、それはストーリーの面白さ、キャラクターの魅力といったいわゆるエンタテイメント性であろう。「中国製のアニメはつまらない」を中国の子どもや学生などがしばしば口にするが、結局ストーリー、キャラクター、演出といったエンタティンメント要素が欠けていることに収斂されるように思える。
ところが、逆にこの部分こそが日本製アニメが面白いと言われる所以そのものなのである。日本と付き合いのある中国のアニメ業界人はそれがわかっていたが、そして政府関係者もここにきてそれを認めるようになり、それが今回の石景山動漫基地への誘致となったと思われる。
ということで、中国が日本に求めているのはこのエンタティンメント要素がつくられる工程=プリプロ(ストーリー、キャラクターデザイン、絵コンテ)と演出のノウハウであろう。
プリプロと演出はアニメの制作工程で作画と並んで付加価値が高いパートであるが、中国がこの職制において人材を輩出できないのはマンガ産業が存在しないという致命的な理由があるので(というかこれほどのマンガ産業を抱える日本が特殊なのだが)、この部分は当面日本から学ぶのが得策と考えたのであろう。
その意味で中国が日本のアニメ産業とどのように付き合い(日本サイドの利益はともかくとして)何を取り入れるのかが決まりつつあるのではないかと感じた次第である。