『何が映画か』黒澤明/宮崎駿
(93年8月/徳間書店/税別2,100円)
黒澤、手塚、宮崎の共通点
黒澤明と宮崎駿の対談本である。ずいぶん前の本であるが、これを読むと『もののけ姫』への道がわかる。なるほど、宮崎さんがつくりたかったのは『七人の侍』だということを(簡単に言い切ると怒られてしまうかも知れませんが)。 しかし、黒澤、手塚、宮崎というのは共通点が多い(ついでに谷崎潤一郎も挙げたいのだが)。世界レベルの傑出した才能に通ずるものを感じるのである。恵まれた家庭環境、博覧強記とそれを支える絶倫の記憶力、そして疲れを知らぬ体力(とその源となる「食欲」)。 父親が住友金属に勤務していた手塚、航空機産業に従事していた宮崎。共に軍需産業で働いていたせいか二人とも父親の事を余り語りたがらないが、恵まれた家庭であったことは間違いない。黒澤の父親は軍人上がりの教育者(日体大の理事)であり、前者二名ほどではなかったが26歳まで旧制中学出の高等遊民であったことを考えるとそれなりに余裕があったのであろう。 次にその知識。黒澤、手塚、宮崎共に驚くべき知識量を持つ。それを支えていたと思われるのが抜群の記憶力である。黒澤について確証はないが、手塚はほぼフォトグラフィック・メモリーの持ち主であり、宮崎も本書を読む限りおそらくそれに近いものがあると思われる。 体力もまた然り。ほとんど寝ずに描き続けた手塚と宮崎、83歳まで映画を撮り続けた黒澤(死ぬまで現役であったが)。そして、その源泉となっていたと思われる驚くべき食欲(宮崎さんについて確証はありませんが)。 ということで、今後日本を支えるクリエーターを育成するなら、裕福な家庭に生まれ(本に恵まれ基礎知識量が多い)、記憶力が抜群で、そしてずば抜けた体力を持った(さらには猛烈な食欲を持っている)人間を選べばよいのではないか?
(Twitterならぬ、Boyaitter) 宮崎さんは絶対認めたくないでしょうが、手塚治虫とホンと共通点が多いですね・・・