『ドラゴンボール』実写化⑨〜「Character is dead」
今までハリウッドにおける原作の取扱について、製作者(プロデューサー)が自由に改編できるような印象を与えたかも知れないが、必ずしもそうではない。中には原作者を尊重しその意向をなるべく汲むようなプロデューサーも存在するであろう(もちろん、それは手を加えない方が沢山客が入るとプロデューサーが判断した場合のみであるが)。
他にも原作者が自分の作品を無惨に改編されないようにする手段がある。それは契約によってである。例え著作人格権がなくとも、しっかりと自分の意向を確保することが出来るのである。許諾権を武器に原作者はプロデューサーと闘うのであるが、敵も百戦錬磨のつわもの。なかなか意向を押し通すのは容易ではない(このへんは多分に原作者との力関係にもよるであろうが)。
かつて『ハワード・ザ・ダック/暗黒魔王の陰謀』(1986年公開)という、マーベル・コミックの人気コミックを実写化した映画があったが、筆者はその日本における商品化権のライセンス担当窓口であった。ユニバーサルがかなり力を入れた作品であったが、CGがなかった時代ということもあり、奮闘空しく最低の映画を選ぶゴールデンラズベリー賞で最低作品賞、最低脚本賞、最低視覚効果賞、最低新人俳優賞の四冠に輝くという栄誉?を担った。
世評の通り、映画は大コケ、ユニバーサル映画の社長のクビが飛んでしまった。筆者はその時、日本でハワード・ザ・ダックのキャラクター・ライセンスを行っていたアメリカ人エージェントが言った言葉を今でも忘れることができない。
「Character is dead…」
未だにハワードが復活したという話は聞かない。映像化が失敗すると原作まで死んでしまうのだ。
原作者は契約によって作品に口を出すことができると述べたが、それでも基本的に著作人格権の考え方のない(この感覚が正直わからないのだが)アメリカでは、どうしても大胆な改編が加えられる可能性が大きい。そのことは、予め原作サイドも覚悟しておかなければならないであろう。