『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』が見せた可能性①
未だに100館以上で上映されている『エヴァンゲリオン進撃:序』であるが、そろそろ最終的な興行収入が見えてきたようである。関係者の推測によると13億円に達するとの見込みで、これはポケモンなどのテレビシリーズ劇場版を除く一般向け劇場アニメとしては断トツの数字ある。
過去に紹介した『河童のクゥと夏休み』『ピアノの森』『ベクシル』『エクスマキナ』などの作品は軒並み5億円以下の興収であったが、そもそもジブリ作品やテレビアニメの劇場版以外のアニメ作品には限界があるようだ。2004年に公開された『スチームボーイ』『イノセンス』という大作も興行収入は揃って10億円前後であった。つまりクールアニメ系作品の興行市場はほぼ10億円が限界であることが証明されたといってもよい。
ここ10年間で前記2作品にジブリとテレビシリーズの劇場版以外で10億円を上回ったのは『あらしのよるに』と幸福の科学製作の一連のアニメ、そして一番最初と今回の劇場版エヴァンゲリオンなど10作品に満たない。その意味でも『エヴァンゲリオン進撃:序』が持つ意味は大きいが、さらに重要なのはその内容である。
『スチームボーイ』『イノセンス』は日本のアニメとしては破格の予算をかけた大作であり、しかも配給は現状一人勝ちとも言える東宝であった。それに比べエヴァンゲリオンの製作は庵野監督の個人会社カラー、配給は単館配給が多いクロック・ワークスである。知名度は未だに抜群であるとはいえ、今回は製作的にも配給的にも正直地味といってもよいレベルであった。
宣伝にしても庵野監督は一切インタビューに応ぜす、映像素材などをはじめとする宣伝データの供給もほとんど皆無といってよい状況であった。日本のアニメ映画としては初の公式作品としてカンヌ映画祭のコンペに参加し、ジブリの鈴木プロデューサーまでが宣伝に協力した鳴り物入り『イノセンス』とは大きく事情が異なった。
そのせいか劇場サイドもさほど期待していなかったのは明らかであった。だから、当初上映が予定されていた座席数224のシネマスクエアとうきゅうから急遽1064席のミラノ1へと劇場をチェンジし、それでも全回立ち見が出るという状況を誰も予測できなかったのである。